音楽の大切さ
◯とあるカフェ
テラス付きのお洒落なカフェ。耳にイヤホンを付けて本を読んでいる相馬仁(21)。その本のタイトルは、『人生に7つの必要な言葉』。
隣にはノートを広げて勉強をしている大学生らしき人。
相馬のイヤホンから音楽が音漏れしている。
大学生「(中々集中出来ない様子)……」
相馬「(リズムに合わせ体が動いている)……」
大学生、音漏れで集中出来ずノートをバックにしまい席を離れる。
大学生「(相馬をにらみ舌打ち)」
相馬「(涼しい顔でリズムを取り続ける)……」
相馬の席の横に富樫正樹(35)が座る。
富樫、テーブルにパソコンとノートを開く。ノートを見ながらパソコンになにやら文字を入力している。
富樫「(隣に座る相馬を見る)……」
富樫、相馬のイヤホンを引っ張って取る。
相馬「(驚き)何すんだよ」
富樫、相馬のイヤホンを自分の耳につける。
富樫「……レディガガね〜。英語分かってるのか?」
相馬「うるさいな。なんだあんたは」
富樫「作詞家だ」
相馬「は?(バカにする)作詞家? こんな時代に作詞家なんているのかよ」
富樫「ああ、ここにいる」
相馬「ふん、音楽なんてのは歌詞じゃなくてメロディーだろ。歌詞はテキトーでも聞けりゃいいでしょ。どうせ大した歌詞書いてないんだろ」
相馬、コーヒーを飲み干し立ち上がろうとする。
富樫「……お前が読んでいる本はなんだ」
相馬「(本を閉じ)これ? 人生に7つの必要な言葉って本だよ。ほんと良い事書いてあんだ」
富樫「で、どうするんだ?」
相馬「どうするって……これからの人生に活かすに決まってんじゃん」
富樫「どうやって?」
相馬「それは……何か問題にぶち当たった時にこの言葉を思い出して立ち上がるんだ」
富樫「じゃあその本に書いていた言葉を言ってくれ」
相馬「えっ……今はいい」
富樫「今だ」
相馬「……そんな長い文章覚えれるわけないだろ! だいたいこの本を読んでる時にすっきりすればそれでいいんだよ! 自己満でいいだろ!」
富樫「……でも、音楽なら人生に大切な言葉をメロディーと一緒に覚えれる。例えば俺が好きな歌詞。ミスターチルドレンの終りなき旅だ。閉ざされたドアの向こうに新しい何かが待っていて、きっときっとって君を動かしている。って長い文章だけどいつでも大切な言葉を言い聞かせられる」
相馬「……」
富樫「さっきレディガガのボーンディスウェイを聞いてたな?」
相馬「はい……」
富樫「あの歌の歌詞は人種、性別、容姿、貧しさなど幸せにとって人生に必要無いって歌なんだ」
相馬「……」
富樫「大事なことは自分自身を大切にする事。自分を愛せない人間が他の人間を愛せるはずがない。僕らはこの姿、形、性格、趣向でこの世に生まれたんだ。これが君が聞き流していた音楽の伝えたい言葉だ」
相馬「……そんな深い意味が込められていたなんて」
富樫「作詞家バカにできないだろ?」
相馬「すみませんでした」
富樫「んじゃ、仕事に取り掛かるか」
富樫、パソコンに文字を入力していく。
相馬「それ、誰の楽曲の歌詞ですか?」
富樫「これ? いや誰のでもない」
相馬「えっ?」
富樫「ぼくプロじゃないよ」
相馬「……」
終わり
tocchi